医療法人社団 恵芳会 松脇クリニック品川 耳鼻咽喉科/アレルギー科/呼吸器内科/麻酔科

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診療内容 / 得意とする疾患

好酸球性中耳炎

著しい耳漏が見られる、なかなか治りにくい慢性中耳炎。
感音性難聴が悪化すると、聴力を失うこともあります。

好酸球性中耳炎の概念は、「著しい好酸球の浸潤とニカワ状の耳漏を特徴とする難治性の慢性中耳炎」とされています1-3)。図はニカワ状の耳漏(左)と好酸球浸潤(右)の病理像を示しています。この中耳炎は成人発症型の気管支喘息患者に合併していることが多く、保存的治療や手術療法に対し、きわめて抵抗性です。
また多くの症例で好酸球性副鼻腔炎の合併がみられ、しばしば感音性難聴の悪化をきたし、時に急速に進行して耳が聞こえなくなることがある聴力予後不良の疾患です。

好酸球性中耳炎の好発年齢は40~60歳台で、1:1.5~6で女性に多いとされています。これは成人発症型の気管支喘息が女性に多いことに関連していると考えられています。
成人発症型気管支喘息の約1割程度に発症し、非アトピー性が比較的多いとされており、約15%がアスピリン喘息を合併していると考えられています 4)。 骨導聴力の悪化は約半数(報告では10~73%)にのぼると認められ、耳が聞こえなくなるまで至る症例は6~20.5%存在すると報告されています。約2/3は両側罹患であり、本疾患のQOLに大きな影響を及ぼす因子であるといえます 4)

診断基準

大項目:
中耳貯留液中に好酸球が存在する滲出性中耳炎または慢性中耳炎。
小項目:
  • (1) ニカワ状の中耳貯留液
  • (2) 抗菌薬や鼓膜切開など、ステロイド投与以外の治療に抵抗性
  • (3) 気管支喘息の合併
  • (4) 鼻茸の合併

これら4項目のうち、大項目と小項目の2項目以上を満たす場合を確実例とします。
ただし好酸球性肉芽腫性多発血管炎、好酸球増多症候群を除外します。

治療方針

※実際の処置過程の映像になります。閲覧の際には十分にご留意ください。

好酸球性中耳炎に対してはステロイド療法が有効です。十分な量の全身投与を持続すれば良好な状態が維持できますが、ステロイド療法には副作用が多く、できるだけ全身投与より局所投与を選択し、全身投与する場合でも最小の量で維持するのが望ましいと考えています。
病変が鼓室に限局している場合は、ステロイド鼓室内注入で病変をコントロールすることにより、かなり病態の進行を遅らせることができる可能性があります。ニカワ状貯留物の除去には、温ヘパリン生食による耳浴と耳処置による吸引が有効です。
肉芽形成増悪時には、ステロイドの内服を考慮します。急激な感音性難聴の進行を認めた場合、突発性難聴に準じたステロイド漸減量法あるいはパルス療法を試みます。好酸球性中耳炎は成人発症の気管支喘息に合併することが多く、ステロイドの使用にあたっては喘息の治療を行っている内科医と相談のうえ、適応を決めていきます 5)

外科的処置・手術として鼓膜切開、換気チューブ挿入、肉芽・耳茸の緩徐などの処置を必要に応じ行うことは治療の基本です。しかし鼓室形成術に関しては、聴力の改善や耳漏の制御が多くの場合困難なことや、かえって骨導の悪化をきたし、ときには耳が聞こえなくなる危険性もあることから否定的な見解が多くあります。耐性菌などを制御するために止むを得ない場合や、頭蓋内合併症を伴った場合などに限定すべきと考えられています6)
両側聾の症例に対しては,近年,人工内耳手術が積極的に試みられ良好な成績が得られています。その適応の場合には慈恵医大(小島教授)に紹介いたします。

  • 1)松谷幸子:好酸球性中耳炎.耳展44:10-15, 2001
  • 2)Nagamine H, et al: Clinical characteristics of so called eosinophilic otitis media. Auris Nausas Larynx 29: 19-28, 2002.
  • 3)Uchimizu H, Matsuwaki Y, et al. Eosinophil-derived neurotoxin, elastase, and cytokine profile in effusion from eosinophilic otitis media. Allergol Int. 2015;64 Suppl:S18-23.
  • 4)鈴木秀明,他:好酸球性中耳炎全国疫学調査.Otol Jpn 14:112-117, 2004.
  • 5)松谷幸子:好酸球性中耳炎の保存的的治療.JOHNS 23:900-904, 2007.
  • 6)飯野ゆき子:好酸球性中耳炎の外科的治療.JOHNS 23:909-913, 2007.
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