医療法人社団 恵芳会 松脇クリニック品川 耳鼻咽喉科/アレルギー科/呼吸器内科/麻酔科

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診療内容 / 得意とする疾患

鼻中隔弯曲症・肥厚性鼻炎(アレルギー性鼻炎)

鼻中隔弯曲症は成人の約80〜90%にみられる形態異常で、無症状のものも少なくありません。鼻閉などの症状を伴ったり、慢性副鼻腔炎やアレルギー性鼻炎に伴う肥厚性鼻炎の病態や症状を増悪させたりする場合、治療の対象となります。

鼻中隔とは?

鼻中隔は鼻腔を左右に分け、外鼻(鼻の形)および鼻腔の形態を維持するのに役立っています。鼻中隔上方の嗅裂部では嗅粘膜(嗅神経)が分布しており、嗅覚に携わっています。また、鼻中隔は①鼻中隔軟骨、②篩骨正中板、③鋤骨という3つの骨・軟骨から形成されています(図1)。

図1:鼻中隔のCTによる弯曲、粘膜肥厚の把握

図1:鼻中隔のCTによる弯曲、粘膜肥厚の把握
図1:鼻中隔のCTによる弯曲、粘膜肥厚の把握

鼻中隔弯曲症と肥厚性鼻炎

成長期の顔面形態への変化(子供の顔から大人の顔への変化)に伴い、鼻中隔を構成する骨・軟骨の接合部が曲がってくる状態を鼻中隔弯曲症といいます。
他の哺乳類に比べて、ヒトの脳は大きく、鼻の上に覆いかぶさっています。また、モノをかむための上顎は骨が固く頑丈であるため、顔面の成長の段階で犠牲になるのが、鼻腔(鼻中隔含め)というわけです。

鼻中隔弯曲症は成人の約80〜90%にみられる形態異常で、無症状のものも少なくありません。鼻閉などの症状を伴ったり、慢性副鼻腔炎やアレルギー性鼻炎に伴う肥厚性鼻炎の病態や症状を増悪させたりする場合、治療の対象となります。

また、スポーツや交通事故などで鼻部を強く強打し弯曲する外傷性鼻中隔弯曲症というのもあります。アレルギー性鼻炎でなくても鼻中隔弯曲症が長期におよぶ場合、凹側の下鼻甲介が代償性に肥大する肥厚性鼻炎を生じることが多く、これも治療の対象となります。

鼻中隔弯曲症・肥厚性鼻炎の診断

前額断CT(図1:A、B)・水平断CT(図1:C)と鼻内内視鏡により容易に診断できます。
当クリニックでは被爆線量が少ない(通常CTの約1/7)コーンビームCTを使用し、3方向および3D構築された画像で判断します(図2)。
具体的には前額断CTで左右の弯曲、櫛(図1:A)や棘(図1:B)、下鼻甲介の肥大の程度を把握します。水平断CTにて弯曲の奥行と前弯の状態を把握します。

図2:鼻中隔弯曲症、アレルギー性鼻炎手術症例

図2:鼻中隔弯曲症、アレルギー性鼻炎手術症例
図2:鼻中隔弯曲症、アレルギー性鼻炎手術症例

※破線:正中ライン, 矢印:鼻中隔弯曲凸部

内視鏡下鼻中隔矯正術と内視鏡下下鼻甲介手術

鼻中隔弯曲症の治療は外科的方法しかなく、当クリニックでは内視鏡下鼻中隔矯正術が適応されます。

内視鏡下鼻中隔矯正術は、鼻中隔の弯曲や突起を矯正するだけでなく、周囲の鼻腔側壁の矯正を含めて治療計画し、施行する必要があります。鼻中隔を正しく正中矢状面へ矯正することによって、狭い側の鼻腔は広げられたとしても、この反対がかえって狭くなってしまっては目的を達成したといえないからです。多くの場合、内視鏡下下鼻甲介手術を同時に行い、鼻腔形態全体の正常化を図ります。

当クリニックでは内視鏡下下鼻甲介手術にはマイクロデブリッダー(Inferior Turbinate Blades®, Medtronics)を用いて粘膜下組織(肥厚した部分)のみを切除除去し、下鼻甲介骨と鼻粘膜上皮を温存するため、術後の出血と痂疲(かさぶた)形成が少なく、タンポンガーゼを挿入しなくて済むようにしています。これにより術直後の鼻閉の軽減とタンポンガーゼ抜去に伴う出血や疼痛を回避することができます。

以前は裸眼での鼻中隔矯正術が行われていましたが、現在では内視鏡下に明視下に行うことにより細かな矯正を行えるようになりました。
また、内視鏡下鼻中隔矯正術と内視鏡下下鼻甲介手術は平成28年度に新たに保険収載された手術法で、保険適応内で行うことができます。

経鼻的翼突管(後鼻)神経切除術

多くの抗原に感作されたアレルギー性鼻炎を合併している場合や、非特異的にくしゃみ、鼻水が発作的にでる方には経鼻的翼突管(後鼻)神経切除術も同時に施行します。

経上顎洞的に手術を施行していたVidian神経(翼突管神経)切断術では、12〜37%に涙分泌機能低下が存在していたといわれていますが、経鼻的に後鼻神経だけ(翼突管神経からさらに末端で鼻腔内に出たところ)を切断する方法ではこのような副作用はありません。

下鼻甲介手術との併用により、約60%の患者に鼻症状の完全な消失を認め、その有効率は80%以上(術後3〜4年の評価)と報告されています3

手術の実際

当クリニックの内視鏡下鼻中隔矯正術・内視鏡下下鼻甲介手術(+経鼻的翼突管(後鼻)神経切断術)は、鎮静剤を併用した局所麻酔を使い、1日入院(日帰り)で行なっております。

手術・入院ガイド参照:https://matsuwaki.com/examination/hospitalization.html

図2、3に内視鏡下鼻中隔矯正術・内視鏡下下鼻甲介手術・経鼻的翼突管(後鼻)神経切断術を施行した症例のCT所見、鼻内内視鏡所見を提示します。鼻中隔は右に凸に大きく弯曲し、下鼻甲介はアレルギー性鼻炎により粘膜が肥厚していました。
術後は鼻中隔がほぼ正中に矯正され、肥厚していた粘膜も正常化し、左右の鼻腔は拡大しています。

鼻の通り具合を計測する検査に鼻腔通気度検査があります。当クリニックでは術前後に鼻腔通気度検査を施行することにより、自覚症状だけでなく、他覚所見で鼻詰まりを評価しています。
この方も鼻腔抵抗値は大きく低下し、鼻詰まりが解消したことが確認できました(図4)。

図3:鼻内内視鏡所見(術前、術後)

図3:鼻内内視鏡所見(術前、術後)
図3:鼻内内視鏡所見(術前、術後)

術前の写真では、鼻中隔が右側に凸に弯曲し、左側は下鼻甲介粘膜の肥厚により鼻腔は両側とも狭小化しています。術後の写真では、それが改善され、両側鼻腔とも拡大しています。

図4:鼻腔通気度検査による比較

図4:鼻腔通気度検査による比較
図4:鼻腔通気度検査による比較

術前、術後の鼻腔通気度検査の結果です。カーブが起きた状態のほうが通りが良いことを示します。術前は両側ともX軸に近く寝たカーブですが、術後は両側ともカーブが立ち鼻腔抵抗値は低下しています。

参考文献

  • 1)松脇由典:鼻中隔矯正術・下鼻甲介切除術.永井良三(監):耳鼻咽喉科・頭頸部外科研修ノート.Pp353-357. 診断と治療社.2011
  • 2)柳 清,春名眞一:鼻中隔手術.森山 寛,他(編):内視鏡下鼻内副鼻腔手術 副鼻腔疾患から頭蓋底疾患まで.Pp73-79. 医学書院.2015
  • 3)Ikeda K, Acta Otolaryngol 2006: 126: 739-45, Ogawa T, ANL 2007: 34: 319-26
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